米国・モートン樹木園 樹木科学センター長 チャック・キャノン博士による、「大木・古木の遺伝的重要性」についての研究報告

原文は下記リンクです。
「Ancient trees deemed vital to forest survival(大木・古木の遺伝的重要性)」
https://mortonarb.org/news/ancient-trees-deemed-vital-to-forest-survival/

これは2022年の発表ですが、この研究報告はとても興味深いです。
こういう研究が増えてきました。大木・古木の遺伝資源としての重要性は、樹木医制度創設者の堀大才先生も仰っています。
大木・古木は水脈の要だったり、多くの動植物の棲み家だったりするため、伐るだけで環境インパクトは大きいです。

以下、翻訳のプロが、サラッと訳してくれたものをシェアします。
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 古木は畏敬の念を抱かせる存在であり、森林への一連の生態系サービスの供給源でもあるばかりか、森林全体が急速な環境変化に適応する能力を維持していることが、新たな研究によって示唆された。

 Nature Plants誌2月号に、米国イリノイ州ライルのモートン樹木園の樹木科学センター長であるチャック・キャノン博士と、イタリアのトスカーナ大学およびスペインのバルセロナ大学の共同研究者が、老木や古木(多くは森林の平均樹齢より10~20倍以上)が周囲の個体群の遺伝的多様性と適応度に大きな変化を与えることを報告している。また、これらの樹木が、森林の長期的な存続に不可欠な進化的特性に寄与していることも示された。

 「シミュレーションによって、数千年かけて原生林に現れる人口動態パターンを調査したところ、ごく一部の樹木が、数世紀にわたる環境サイクルを跨ぐ遥かに高い年齢に達する、生活史上の『宝くじ当選者』として出現することが示された」と、キャノン氏は述べている。「我々のシミュレーションでは、これらの希少な古木は、森林の長期的な適応力にとって不可欠であり、集団全体の遺伝的多様性が意義を持つ期間を大幅に拡大することが示された」。

 著者らは、古木の死は、人間のように予測可能なプロセスではなく、むしろ、環境によって生じるランダムな産物であると報告している。これらの樹木は、シミュレーション条件下では個体群の1%にも満たないが、数百年から千年にわたる幅広い歴史的環境条件を反映して、森林全体に極めて重要な量の遺伝的・生物学的多様性をもたらしているのである。

 つまり、古木は数百年、数千年にわたる無数の環境変化を生き抜いてきたのであり、その遺伝的回復力が森林に受け継がれているのだという。さらに、これらの古木は、その生態系にかけがえのないサービスを提供している。絶滅危惧種の生息地を提供し、一般的な成木と比較して不釣り合いな量の炭素を固定しているのだ。

 しかし、残念ながら、世界中の原生林が危機にさらされている。この研究によると、世界中で自然林の伐採が進んでおり、北方生物圏から熱帯地方まで、樹木の総死亡率が世界的に増加しているとも考えられる

 著者らのシミュレーションによると、樹木が到達しうる最大年齢は、観測された死亡率が低いことに特に影響されやすい。しかし、気候変動がもたらすと考えられるような高い死亡率では、樹木が目を見はるような樹齢に達する能力は非常に限られているか、事実上皆無である。

 「気候が変化すると、樹木の死亡率が上昇し、森林に古木が出現することがますます困難になるだろう」とキャノン氏は述べている。「老木や古木を一度伐採してしまうと、そこに含まれる遺伝的・生理的遺産を永遠に失うだけでなく、自然保護のためのユニークな生息地も失ってしまう」と、彼は付け加えた。

 森林の再生や植樹の取り組みは、地域と地球環境の両方を改善する重要な手段だが、古木は、新たに再生する森林では再現不可能な原生林の創発的特性であり、保護しなければならないと、著者らは強く指摘しています。

 「この研究は、生物多様性を保全するための世界的な戦略が緊急に必要であることを想起させる。それは、手つかずの森林を保全することだけでなく、特に管理された森林景観の中にわずかに残っている古木を保全することだ」と共同研究者のピオヴェッサン氏は述べている。

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